なぜ旅館の多くは廃業するのか?

参考) ニッセイ基礎研究所 旅館市場規模2012
参考) ニッセイ基礎研究所 旅館市場規模2012

先日、静岡県の伊東市にある旅館に宿泊した。WEB上の口コミで5段階で4点の評価の施設なので、中の上くらいの位置づけだと思う。結論から言うと・・・明らかに、その評点に対してネガティブなギャップを感じた。(もちろん口コミという評価なので相対的評価だしその口コミの信頼性の高低はあるが、それをある程度満たしていると前提しているが)

 

ここ数年、ビジネス場面でもプライベートの時でもホテルばかりを利用していた当方なので

その差をあまり考えて来なかったけれども、これは明らかにその多くが顧客から受け入れられなくなってきているからだ。図を見てみてみると分かるように、旅館の売上げは1991年の3.5兆円をピークに下がり続けて直近だと1.7兆円前後と最盛期の半分以下となっている。一方、ホテルはというとおよそ1兆円前後をキープしている・・・これは新陳代謝を伴う横ばいなので顧客から一定の評価を得ていると思われる。さらに1990年以降バブル崩壊やリーマンショックといった大きなリセッションを経験しているのでその意味合いはさらに大きいと感じる。

 

その差は何なのか・・・調べて見ればわかるのだが、個人的には以下の3点ではないかと考える。

・ITインフラの未整備
・低質な顧客サービス 

・建物設備の老朽化への対応遅れ

まずは、ITインフラもハード・ソフトと2つがあるがその片方も満たされていないこともある。この時代、会計処理・顧客管理・・・ITを利用せず経営する事はナンセンスだ。と、こんな事を書くと我が旅館はソフトも導入しているし・・・という反論を頂くが、しっかりとその目的や意味を理解した上で利用されていれば全く問題がないが、実はそうでない事も多い。これは旅館にそうした事に詳しい人間、或いは、そうした事をサポートしてくれる外部の人間がいない事に起因する。

2つ目の顧客サービスの部分、これは先日の宿泊施設で経験したのだが、客室への案内待ちで待たされるという残念な話にも繋がる。サービスの行き届いた旅館だと、仮に待つ事はあっても御茶やコーヒーが出たり或いは他のサービスなどで待たされ感がないような工夫があったりする。担当の仲居さんが個別に悪いわけではなく、その旅館自体そうした教育やサービスの仕組みが出来ていないからだ。他にも上げればキリがないが、当方が気づかないことでも家内が気づいて気になったことは幾つもあった。

そして、3つ目は上の事柄と連動するが設備の老朽化だ。インフラの未整備に加えて顧客サービスが低ければ当然の如く顧客は離れる。つまり売上が低下する。それにより設備投資が出来なかったり、遅れたりすることで悪循環が発生してしまう。

 

ホテルや旅館を取り巻く外部環境は日毎に変わるが、ホテルと旅館で大きく異なるという事は考えにくい。とするならば、少なくても内部環境に起因すると考えて差し支えないと考える。つまるところ企業努力が足りないんだと。

それを裏付けるように、ポータルサイトの一休に登録されているホテルや星野リゾートなどが運営するホテル或いは一部の高級ホテル・旅館に関しては単価・売上げ共に横ばいか上昇基調にある。

 

ITインフラ、顧客サービス・・・経営者として必須の事柄を重視せずいる所が苦境に立たされているというのは間違いない。そう思う。